「どういうことだ、霧子」
ぐっと腕をつかまれる。
「いたっ……」
「まあまあ落ち着いて。まずドアを閉めましょう」
悠が前に出て、篤志さんの手首を締め上げる。よほど痛かったのか、彼は私の手を離した。
うっと低い唸り声が聞こえないのか、悠は空いている方の手で、ドアを閉める。
片手で相手の手を封じちゃうなんて……すごい。昨日テロリストを倒したことといい、見た目よりずいぶん力があるみたい。
悠はドアを閉めてロックすると、やっと篤志さんの手を離した。
「貴様……!」
きさまって。日常会話で使う人、本当にいるんだ。
篤志さんは悠をにらみつけている。かと思うと、勝手に部屋に上がり込んできた。
「なんだこれは!」
案の定、彼は悠の私物を指でさし、怒鳴る。
ああ……だから嫌だったのよ、この同棲状態……。
「あなたが勘ぐっているようなことはなにもありませんよ。総理と霧子さんの希望で、ここで警護をしているだけです」
「じゃあなぜ、皿が二つ置いてある! 僕だって霧子の手料理なぞ食べたことがないのに」
「……俺が作ったんですけどね」
憤慨している篤志さんに怯える素振りはまったく見せず、呆れ顔で反論する悠。
私は二人のやり取りを、ハラハラしながら見ているだけ。
どうしよう、この状況。まるで、二人の男に取りあわれている少女漫画の主人公みたい。



