たしかに、彼は婚約者であって、テロリストじゃない。
今隣にいるのも、彼氏じゃなくて、SP。
二人が鉢合わせても、何も問題はないはず。ない……よね?
自動ドアのロックを解除すると、やがて部屋の呼び出しブザーが鳴った。
「はい……」
玄関のドアを開けると、スーツを着た篤志さんが現れた。
「昨日、大変だったんだって? どこも怪我していないか」
「え、ええ……大丈夫です」
そうか、このひと一応婚約者だものね。心配してくれたんだ。
私は自分の格好を見て、ホッと息をつく。
毛玉だらけの部屋着じゃなく、普通のカットソーとデニムという、無難な格好をしていて良かった。
「あのー、早く玄関を閉めてくれませんか。誰かが霧子さんを狙っているかもしれないので」
背後からのんびりした声が聞こえ、びくっと背中が震える。
振り向く必要もない。それは悠の声に間違いない。
彼の姿を認めたのであろう篤志さんの顔が、みるみる歪んでいく。
「誰だお前は! どうしてこの部屋にいる!?」
「あ、ひどい。完全に忘れてますね。SPの大西です」
どこからとりだしたのか、警察手帳を見せた悠は、いつの間にか私の隣に立っていた。



