「嫌ですっ!」
私はバッグから出しかけていたカードキーを、咄嗟にしまいなおした。
部屋の中は適度に片付いている。汚いから大西さんを上げられないということはない。
けど、食料はインスタント食品や菓子パンしかないし、部屋着は毛玉だらけ。インテリアは全部ニ○リの安物。去年のクリスマスから飾ってある百均のサンタさんの置物が出しっぱなし。
どうせ婚約者の篤志さんは庶民のマンションにきたがったりしないだろうし、他の男の人が部屋に来ることもない。
そう思いこんで、確実に怠けていた……!
「大丈夫。高浜さんが前に担当した子なんか、女子なのに汚部屋でどうしようもなくて高浜さんちに泊まってたんだけど、ノーブラにジャージでウロウロしてたんだって」
そこまでひどくはないけど、私も女子力は決して高くない。
「さ、早く。ここにいたら、不審者来ちゃうよ?」
そんなふうに脅されたら、部屋に帰らないわけにいかなかった。
カードキーで入口の自動ドアを解除し、エレベーターに乗り込む。
二人きりの個室内である意味ドキドキしながら、目的の階で降り、部屋の前まで来た。



