「ほら、霧子。目を開けて」
悠は少し体を離し、指で私の涙を拭う。
「今日はお前が産まれた、大事な記念日だよ」
言われて瞬きをすると、悠の肩の向こうで、父が肩を震わせているのが見えた。
顔を真っ赤にして、顔の中央にたくさんのシワを寄せている。
まるで、泣くのをこらえようとしているみたい。
「そして、もう一つ大事な記念日にしよう」
あごをとらえられ、父を見ていた視線が上がる。
目の前には、真剣な悠の顔しかない。
ふうと息を吐いて、新しい息を吸った悠は、私の瞳を真っ直ぐに見つめて、言った。
「藤沢霧子さん。俺のお嫁さんになってください」
直球のプロポーズ。
その豪速球は、どかんと私の胸のど真ん中に命中した。
「うん、うん……」
泣かないで、悠の表情をしっかり見ておこうと思うのに。
意志とは裏腹に、止まらない涙が首まで濡らしていく。
「よろしく、お願い、します……」
泣きながらもなんとかうなずくと、周りから拍手が沸き起こった。



