そこから出てきたのは、父ではなく、もっとすらりとした長身の人影。
大きな花束を持ったその人は、ブラウンのスーツを着ていた。
自然なウエーブがかかった髪に、大きな瞳。厚めの唇は、口角があがっている。
息が止まるかと思った。
見開いた私の瞳に映るのは、間違いなく悠だった。
「誕生日おめでとう、霧子」
悠は何も変わらない笑顔で、階段を降りてくる。
その声に涙腺を破壊された私は、口を押えて泣くしかできない。
「って……泣くなよ!」
最後の何段かを駆け下りてきた悠は、花束を床に放りだす。
そして、私を力強く、ぎゅっと抱きしめた。
「悠ぁぁぁ……っ」
夢じゃない。
痛いくらいに私を抱きしめるこの腕は、間違いなく悠のもの。
温度もにおいも、何も変わっていない。
「ごめんね。これでも最速で準備してきたつもりなんだ。無事にSPとして元の班に復職できることが決まったんだよ」
遅いよ。
どんなあなただっていい。
一刻だって、離れていたくなかった。



