「ううん。ここから始まるんだよ」
そっと優しく手をとり、私を立ち上がらせる悠。
「ごめんね。俺ももう行かなきゃ」
「そんな、せっかく会えたのに。今度はいつ会えるの?」
「わからない。ほら、誘拐犯にされかけたりしただろ。退職届は無効にして復帰できるように篠田さんが庇ってくれてるんだけど、まあ色々とお偉いさんの会議にかけられててさ。今後、どの部署に行くのか、勤務地はどこになるのか、何も決まってないんだ」
そんな。もしかしたら、今とは全然違う部署になって、地方に飛ばされる可能性もあるってこと?
「だから、こんなに綺麗な花嫁をもらう資格は、今の俺にはない。霧子のお父さんも、絶対に許してくれないだろうしね」
ちらっと父を見た悠は、眉を下げて笑った。
つられて父を見ると、悠とは正反対に眉は吊り上がり、口はへの字に曲がっている。
顔じゅうで悠を威嚇している。そんな感じ。



