あの篤志さんが反射的に動き、父を救ってくれるなんて。
ホッとすると同時、思いもしなかった彼の行動に驚く。
あの夜も今カノさんと逃げようとしていたけど、こんなに素早く動けていなかったような……。
「もう、どうでもいいわよ!」
私は力任せにネックレスのトップを持ち、鎖を引きちぎった。
首に引き攣れるような痛みが走る。
そんなことは気にしていられないと、それをテロリストに向かって突き出した。
「欲しいのはコレでしょ。さあ、持っていきなさい」
「いけない、霧子……」
「総理、ここは黙って言う通りにしましょう」
どうしてもネックレスを渡してほしくなさそうな父と、それを説得する篤志さん。
「人の命には代えられない」
私はお父さんにそう言うと、ネックレスをテロリストの方に放った。
テロリストはそれをピストルを持っていない方の手で受け止めると、顔の上でそれを透かして見る。本物かどうか、確かめているんだろうか。



