嫌味に嫌味で返す。
けれど篤志さんは、秘密がなくなったせいか、逆にスッキリしたような表情を見せた。
「キミに迷惑はかけない。大丈夫だよ」
「子供に罪はないんだから、不自由しないように大事にしてあげて」
「本気で言ってるのかい。キミはなんてできた奥さんなんだ!」
大げさに喜ぶ素振りを見せ、篤志さんは一足先にチャペルの中に入っていく。
それと同時くらいに、父がやってきた。
「ドレスを踏まないようにしなくてはな」
そんなセリフが、とても空虚に聞こえる。
あれ……そういえば。篤志さん、今日はこのネックレスについて何も言わなかったな。
婚約発表のときは、色々と文句を言っていたくせに。
「霧子、出番だよ」
父のセリフで我に返る。
式場の周りには、スーツのボタンを開けっ放しにしたSPたちがいる。
その中に、つい悠の姿を探してしまう。
ばかみたい。もう、彼が私の前に現れることは、きっとないのに。
もう、あの陽だまりみたいな笑顔で笑ってくれることはないのに。



