「ええ、知ってます。でも、これでいいんです」
体を締め付けるコルセットに、重いだけのドレス。決して走って逃げられないようなヒール。
これ以上、自分を苦しめるものは必要ない。
スタッフはそうですかと言い、豪華な首飾りを大事そうに奥に持っていく。
そういえば、このところテロリストにあっていない。
もう、このネックレスのことは諦めたのかな……。
「新婦さん、そろそろお時間です」
スタッフに呼ばれ、式が行われるチャペルまでの短い通路に出る。
すると、そこに白いタキシードを着た篤志さんがいた。
「綺麗だな、霧子」
いったいどういう心境なのか、にこりと笑う篤志さん。
会うのは、悠がキレたあの夜以来。
彼も、結婚と引き換えに、悠を訴えないことを約束してくれたと、父から聞いていた。
私たちに会釈をし、スタッフはバージンロードを一緒に歩く父を迎えに行った。
「あの男との遠足は楽しかったか? いい思い出はできたか」
「……ええ。あなたは大丈夫? お子さんは順調?」



