私の事情聴取は、東京に帰ってきた日に行われた。
そのことを知っているのかいないのか、父は悠を完全に敵視しているみたい。
「婚約者がいると知っていてたぶらかすなんて、ろくな男じゃない。更生すべきだ」
「ろくなって……既婚者のくせに他の女に子供を産ませた人が、何を言ってるのよ! 篤志さんだって、他に恋人がいる。しかもその人は妊娠しているのよ。あなたたちの方が、よっぽどろくな人間じゃないわよ!」
大きな怒鳴り声が聞こえたのか、父についているSPたちが部屋のドアを開けて覗き込む。
父はそれを、手を上げて制した。
「お前の言う通りだ。私も篤志くんも、ひどい人間だよ」
「お父さん……」
「それでも、お前には篤志君と結婚してもらわなければならない」
お父さんは辛そうな表情で、でもはっきりと言い放った。
最後の望みが、がらがらと目の前で崩れていく。
親子ならいつかはわかりあえるはずなんて、嘘だ。
そんなの、綺麗な創作物の中だけの話なんだ……。



