「アホ! 冷静になれ!」
阻まれた腕を矢作さんにとられ、そのまま背中にひねりあげられる。
苦痛の表情を浮かべた悠は、絶叫した。
「なれるわけ、ないだろおおおおっ!」
何をどうしたのか、悠は矢作さんの拘束から腕を抜きとる。
そして、目にも止まらない速さで、そのすらりとした足を矢作さんに向かって振り払った。
しかしそれは、新城さんが腰から取りだした警棒によって打ち下ろされる。
──バキイッ!
まるで耳を塞ぎたくなるような音が、辺りに響いた。
「うっ……!」
足を押さえて、うずくまる悠。
たまらずに駆け寄ろうとした私に気づいたのか、勢いよく顔を上げると、彼は叫んだ。
「逃げろっ、霧子! お前だけでも!」
「はる……」
「不幸になるなっ。このままじゃ、お前は……!」
言葉の途中で、二人のSPが悠を押さえつける。
地面に顔をこすりつけながらも、悠は懸命に私に訴える。



