あと少しで借家にたどり着くところで、異変に気づいた。
家の周りを、スーツを着た男の人たちがウロウロしている。
慌てて曲がり角に隠れ、ガサガサと音がする新聞を、そっと地面に置いた。
もしかして、警察? テロリストではなさそうだ。
どうしよう。引き返して、裏道をぐるりと回って、船着き場まで行けるだろうか。
間に合うかわからないけど、とにかくそれしかない。
走りだそうとしたとき、ぽんと肩を叩かれた。
驚きで叫びそうになった口を、そっと押えるのは……。
「悠!」
「しっ。帰ってこようとしたら、異様なにおいがしたからさ」
どうやら、あの人たちのにおいを察知して、家の裏側からこちらに来たみたい。
「どうしよう。警察が、悠を誘拐犯だと思っているみたい」
「だね。俺も、そんな噂をついさっき聞いて、急いで戻ってきたんだ」
ひそひそと話す悠の顔には、いつもの笑顔はない。
きっと、仕事中に誘拐事件の噂を聞いたんだろう。



