「今のところ火は出ていないようですが、念のため、消防に連絡をしましょう。先生たちは、生徒を帰宅させてください」
低い声の人が電話をかけ始める。
「あの……」
おそるおそる声をかけると、彼はこちらを振り向き、にこりと笑った。
「もう大丈夫だよ」
立ち尽くしている私に、大西さんは言った。
「今日から俺が、キミを守る」
「え……?」
守るって、何から?
「あれ、一昨日会ったばかりなのに、俺のこと忘れた?」
いや、忘れるはずがない。今朝だって夢に見てしまったのだから。
首を横に振ろうとすると、大西さんは何も気にしていないように屈託なく笑う。
「キミの専属SPに任命されました、大西です。よろしく」
そうして彼は、右手を差し出す。
躊躇していると、彼は勝手に私の手をにぎり、勝手に握手をした。



