それってもしかして、悠のアパートに行った日のこと?

あそこで桜さんと私の顔を合わせておけば、周りに不審がられずに再会することができる。

いきなり会ったことがない人がホテルに直撃してきたら、いくら悠の妹だって聞いても、不審に思うもの。


「桜さんは何て?」

「好きにしたらって。でもやるからには、途中で逃げ出すなよって」

「男前だね」

「だろ? なんか、兄である俺に恩を感じているみたい。そんな必要ないのに」


そっか……きっと桜さんは、今まで自分のことをすべて後回しにしていた悠に、ずっと感謝していたんだ。だから、今回は好きにさせてくれたんだね。


「でも、悠は桜さんが結婚するまで、誰とも付き合わないんじゃないの?」

「はっ? もしかして、高浜さんから聞いた?」


うなずくと、悠は照れ臭そうに笑った。


「実は桜、結婚を前提につきあっている彼氏がいるんだ。そろそろ家を出ていくって言っていたところ」