──ガシッ!
「えっ……」
私に伸ばされた手を、後ろから誰かがつかんだ。
振り返るより早く、その人が私を自分の背中に回す。
見覚えのあるスーツ。このひと、まさか……。
「下がって!」
私が呆然としているすきに、目の前の彼は黒ずくめの男の脇腹に、拳を突き出す。
それをもろに受け、よろけた相手の腕を離さず、彼は拳を解除し、相手の奥襟をとった。
「それっ!」
まるで柔道の大外刈りみたいにして、彼はすらりと伸びた長い足で相手の足を払い、床に沈ませた。
ぎりりと相手の手首をつかんだまま、床に押さえつけるその人は……。
「あ……っ!」
自然にカールした髪、大きな目、綺麗な唇。
すらりと伸びた長い手足を持つその人は、たしかにあの夜会った、SPの大西さんだった。
「大人しくしろっ」
大西さんの下でもがく黒ずくめの男に、彼はポケットから取りだした手錠をかける。
その間に、あちこちで男同士でもみあう声が聞こえてきた。
気がつけば、煙の中の人影が倍に増えている。



