「で、どうする? やっぱりやめる?」


悠が穏やかな声音で聞いてくる。

その顔は、とても寂しそうに笑っていた。

その瞬間、何かが吹っ切れた。


「ううん、行く」


きっぱりと答えると、悠がじっと私の目を見る。


「私も、我が子を仕事の道具にするような父に未練はない」


もう、迷いはない。

私には家族と呼べる人もいない。大事な仕事も取り上げられた。

それよりなにより、あなたが好きだから。

他人を明るくする、太陽のような力を持ったあなたの闇を、私は少ししか知らない。

けれど、どうしてもそんなに寂しそうな顔をするあなたから、離れるなんてできない。

これからも、知らないあなたの一面に戸惑うことがたくさんあるだろう。

それでも、私はあなたについていく。

真っ直ぐにその綺麗な瞳を見返すと、悠は安心したように微笑んだ。

そんなやりとりをしていると、今まですっかり忘れていた桜さんが割り込んできた。