そんな……。

父は、篤志さんに他の女の人がいるってわかっていても、この政略結婚を押し通すつもりでいるということ?

絶望に近いものが胸の中に降りてくる。けれどそれを振り払うように、悠が私の手を握った。


「俺、班長に辞表を郵送してきた。だからもう、思い残すことはないよ」

「えっ!」


辞表を……郵送って、アリなの?

じゃなくて、辞表を出してしまったなんて。


「大丈夫、あんな人間に圧力かけられるような組織に未練はない」


あっけらかんと言っているけど、そんなにあっさり辞めちゃっていいの?

SPになるにも、それを今まで続けてきたのにも、相当な努力をしてきたはずなのに。

結局、私のせいで警察を辞めさせることになっちゃった……。


「ほら、そんな顔しないで」


頬をぷにっとつままれる。

そんな顔って、どんな顔してたんだろう。