強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】



「だけど、婚約者がいるのに、こんなこと、絶対ダメだと思って……」


しゃくりあげる子供みたいになった私の背を、悠は優しくぽんぽんと叩く。


「うん。俺もそう思ってた」


そう囁く声が優しすぎて、また涙が溢れた。


「でも、逃げるって?」

「うん。実は昨夜、事情聴取の途中で、総理に会ったんだ」

「えっ」


父に? いったいどうして?


「あの婚約者と総理が、俺に言ったんだ。俺をSPから外して、霧子との接触を一切なくせば、懲戒免職だけは免れるようにしてやると」

「なにそれ」

「あいつは気づいたんだよ。俺が霧子のことを好きだから殴られたんだってことに」


悠はそっと体を離し、長い指で私の頬の涙をぬぐう。


「これ以上、二人の結婚を邪魔しないこと。浮気相手のことも忘れたふりをして口をつぐんでいれば許してやるってこと」

「そんな。父はもう、篤志さんの浮気のことを知っているの?」

「じゃないのかな。篠田さんが間に入ってたから。あいつは嫌な奴だけど、真実を曲げるのは嫌いなんだ。今回の問題のことも、総理には隠さず伝えてると思う」