強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】



持ち手を伸ばしてコロコロ転がしながら、颯爽と歩く桜さん。

私は小走りで、その後をついていった。

もしかして、この先にいるのは……。

期待を抑えきれなくて、胸が高鳴る。

やがて着いたのは、人の流れが少しだけおさまった、京葉線の乗り場へ降りるエスカレーターの脇だった。

そこに、一人の男の人が立っている。

パーカーの上にジャケットを着た若い男の人。

彼は私の方に顔を向けると、つけていたサングラスと、かぶっていたパーカーをはずす。


「あ……」


その下から現れたのは、茶色がかった緩やかなウエーブがかかった髪。

猫みたいに大きな目に、高い鼻。口角の上がった綺麗な唇。


「悠……!」


どうしてこんなところに。

期待通りのことが起きたのに、どうしてか体が動かなくなってしまった。

まさか、こんなにすぐに会えるなんて。