強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】



それから、30分後。

駅のすぐ近くの駐車場に車を停めた私たちは、そろって歩き出す。

人で溢れかえる東京駅の中でふと自分の格好を見直すと、恥ずかしくなる。

春物のトレンチコートを着こなす、足長の桜さんが隣にいるからだろうか。

部屋着に見えなくもないグレーのパーカーワンピの下に黒いスキニーパンツ、白いスニーカーに赤いショルダーバッグを持った私は、彼女よりも年下に見えること間違いなし。

だって、ホテルにいたんだもん。スリッパ履いてなかっただけ、良かったとしよう……。

桜さんは広い東京駅の中を迷いなく歩き、コインロッカーに私を連れていった。

縦に長いコインロッカーのカギを開け、その中からひざ下くらいの黒いキャリーケースを取りだす。


「それは?」


聞くけど、桜さんは目を合わせただけで、答えてくれなかった。