そう言いながら、桜さんはさっさと部屋にあった椅子を小さなテーブルの周りに集め、持参した紙袋から紙皿を取り出し、その上においしそうなスコーンを乗せた。
朝から焼いてくれたのかな。いったいどんな気持ちで……。
「ほら、そんなに暗い顔しないで。兄貴なら元気にしてるから。あ、コーヒーも持ってきたの」
そう言うと桜さんは魔法瓶と紙コップを取りだした。
何て荷物の多い兄妹なの。悠が私のアパートに大きなリュックを背負ってきた日のことを思い出す。
チャーハンを作ってくれたんだっけ。同じ日にもらったサボテンはどうなっているだろう。あまり水をあげなくてもいいとは言っていたけど……持ってくれば良かったな。
桜さんの一挙一動に悠を重ねてしまう自分が嫌になる。
ふうとため息をついたとき、桜さんはコーヒーをいれたコップを新城さんに渡した。
「はい、新城さん!」
桜さんは満面の笑みで、コーヒーを勢いよく新城さんへ差し出す。
「あっ!」



