「霧子さーん! 会いたかったー!」
新城さんがドアを開けた途端、桜さんがなだれ込むように入ってきた。
戸惑う暇もなく、がばりと抱きつかれる。
「兄貴から聞きました。色々大変でしたね」
ぱっと体を離した桜さんに微笑まれると、悠の笑顔を思い出して切なくなった。
「なんだ、お前ら知り合いなのか」
「お久しぶりです、新城さん。兄貴が霧子さんのことを心配して、様子を見てこいって言われて」
桜さんは新城さんと顔見知りのようで、はきはきと綺麗な声で話す。いつももごもごしている私とは大違いだ。
それより、悠が私のことを心配していたって?
バカ。他人の心配をしている場合じゃないでしょう。
「とにかく、座りましょうよ。ほら、差し入れもってきたんです。兄貴特製のチョコチップスコーン」



