「やめて、そんなことしたら死んじゃう!」
勇気を出し、悠の腕につかまる。
「死んだっていいんだよ、こんな最低なやつら」
「良くない! 絶対ダメっ」
「お前を守るためなら、俺は何だってする」
そう言った悠は、拳銃を持った空いた方の腕で、銃口を倒れた敵に向ける。
「違う、違う違う違う違う! そんなの、私を守ることにならない。私を守るって言うんなら、正気に戻って。こんなのただの暴力だよ。テロリストと変わらない!」
喉が枯れるくらいに叫びながら、ぎゅうっと抱きつく力を強めた。
「ねえ、悠。人に傷つけられたからって、やりかえしていいわけないんだよ。そうした途端、私たちも加害者になっちゃう。悠が軽蔑する、最低の人間になっちゃうんだよ……」
自分の目的を達成するために人を傷つけていいのなら、それは父や篤志さん、それにテロリストと何も変わらない。



