全身を冷汗が伝う。
一人の手が私の首に伸ばされた時、ふと時間が止まったような気がした。
男たちの顔が、急にこわばって動かなくなったからだ。
「あんたらさあ……無事に帰れると思ってるの?」
悠の声が、男たちのすぐ後ろから聞こえた。
気づけば、あと二人の敵は既に路上に倒れ込んでいた。
「はる……」
名前を呼ぶ暇もなく、右の男が拳銃を持った手にこめかみを殴られたと思えば、左の男の脇腹に鋭い肘鉄が突き刺さった。
左右に吹き飛ぶ男たち。
これで、征圧完了……のはずなのに。悠は右の男が倒れる前にその腕をつかみ、ぐいと引き起こす。
「二度と、霧子を傷つけられないようにしてやるよ」
彼はそう言うと、にやりと獰猛に笑った。
その口の端は切れて、血がにじんでいた。
「やめてっ」
嫌な予感がして叫んだ私の声なんか聞こえていないように、悠は拳銃を持ったまま、相手の脇腹を何度も殴りつける。
ぼき、と肋骨が折れるような不吉な物音が鼓膜を震わせた。



