「こんなときに現れるなんて、運の悪いやつらだな」
悠はそう言うと、腰のホルスターから銃を抜きとった。
肩から手を離し、自分の後ろに私の身を隠す。
ちらりと見上げた表情は、いつもの悠とは、まるで別人。
得物を狙う、獣そのものだった。
「死にたいやつからかかってこい!」
かちゃりと銃の安全装置を外す音がした。
と同時、いつの間にか私たちを取り囲むようにしていた敵が、右から左から、悠に襲いかかる。
「悠!」
パン、パンと連続で銃声がする。悠はそれを、動物的なカンなのか、少し体をよじらせる程度で避けてしまう。
耳を押さえてうずくまるしかできない私は、暗闇の中で弾道を見切ってしまう悠の異常さに息を飲んだ。
この前、ホテルの庭で襲われた時とはまた違う。
完全に野性に立ち戻ってしまったような悠は、自分から敵に飛び込んでいった。



