「あなたも、私を愛してなんかないのね」
ぽろりと口からこぼれた言葉に、篤志さんは首を横に振る。
「いや。僕は君を一目見た時からとても可愛らしいと思っていたし、正直なところに惹かれている。君が好きだよ、霧子」
「は……」
篤志さんの目が、私をまっすぐに見つめている。
う、産まれて初めて、真剣告白をされてしまった……。
「これでも、懐の深い夫になろうと必死に努力しているんだ。そりゃあ妻が他の男に抱かれているのがおもしろいわけないだろ。嫉妬で狂いそうだけど、君が泣くよりはいい」
だ、抱かれているなんて……ごめんなさい、そんな相手、本当はいないんです。と、謝りたくなる。
そうか、篤志さんだって努力してくれているんだ。私を想ってくれている……。
「いいんじゃない、霧子。ここまでいい条件出してくれる相手、他にいないよ」
静かな声が、背後から聞こえた。
振り返ると、悠が微笑んでいた。
たしかに、ここまで妥協されたら、断る理由がもうない。



