「しかし、僕と婚約をしてしまったということは、その相手とはうまくいかなかったんだよな？」
「うっ……」
しまった。どうして、『つきあっている人がいる』と言わなかったんだろう。
「これからうまくいきそうな兆候は？」
そう聞かれて、胸がギュッと握りつぶされたような痛みを感じた。
私と、好きな人がうまくいきそうな兆候？
そんなもの、ない。どこにもない。
だって、相手はＳＰ。私はただのマルタイで、婚約者がいる。
ああ……ごめんね悠。こんなときに自覚するなんて、本当にバカだ。
私は、あなたのことが、好きみたい。
「どうでしょう……わかりません」
苦し紛れにそう答えると、篤志さんは小さなため息をついた。
「それは仕方ない。霧子がこっちを向いてくれるのを、気長に待つとするよ」
「えっ？」
「どうしてもその男と会いたいときは、会えばいい。それも束縛するつもりはない。ただ、世間に不倫がばれないようにしてくれれば」
何それ……私が他の男の人と会ってもいいなんて。
