彼の言っていることは一理ある。
こうして穏やかに話していれば、彼は悪い人じゃないような気がしてくる。
傲慢で、鼻につくところがたくさんあるけれど、良いところだってあるのかもしれない。
私は今までそれを、探そうともしていなかった。
「でも……私、専業主婦になりたくないんです。今さらだと思うんですけど、教師の仕事にすごく未練があって」
ゆっくり搾りだすように言うと、篤志さんはうなずいた。
「それも、君の好きにしたらいい。僕は色々なことを押し付けすぎていたと思っている。両親は色々言うだろうけれど、僕が説得する」
そ、そうなの?
なんていうか……意外に、話せばわかる人だったの?
突然柔和になった相手の態度に、心の武装が緩くなっていくのを感じる。
毛嫌いしてしまって悪かったな。そう言えば、無理やりキスされる前は、好きでも嫌いでもなかったんだっけ。



