「怒っています、よね?」
逆に嵐の前の静けさみたいで、気持ち悪いんだけど……。
「いや、怒っていない。むしろ、しっくりきたというか」
どういう意味?
そのまま相手の言葉を待っていると、篤志さんはコップに入っていたビールを飲みほし、座卓に置いた。ことんと、静かな音がした。
「今までほとんど一緒に過ごす時間がなかったのに、愛しているなんて思う方が変わっている」
「はあ……」
「素直に言ってくれて、良かったと思っている。たしかに僕は、キミに対して思いやりが足りなかった。婚約披露の後であんなことをして、きっと嫌だっただろう。すまなかった」
ちょ……ちょっと待って。今までの篤志さんと違う。
いきなりそんなことを言われると、調子が狂うって言うか……。
「嫌われても仕方ないと思うけど、今からじゃ遅いかな」
「え……」
「今から、こうして会う時間を増やして、だんだんとお互いをわかりあっていけば、そのうち夫婦らしくなれると思うんだが」



