「いい香り……」
緊張した気持ちが、少し落ち着いてくるみたい。
「兄貴から、霧子さんのことを少しだけ聞いています」
「えっ」
私のことを? いったい何を話したのか。
「霧子さんは、ラプンツェルなんだって」
「は?」
ラプンツェルってなんだっけ。悪い魔女に高い塔の上に閉じ込められたお姫様の話だっけ。
たしか、長い髪の毛を登って王子様が会いに来てくれるんだよね。
思い出した。小学生のとき、その話を読んで、『髪の毛をロープにされたら、頭皮はがれそう……』って思ったものだ。
「塔の上で助けを待っているお姫様を警護しているんだってメールをもらいました」
「何ですかそれ……」
誰がラプンツェルなの。恥ずかしい。力抜けるわ。
変な兄妹の家に来てしまったと思いながらハーブティーに口を付ける。
視線を感じて顔を上げると、桜さんがじっとこちらを見ていた。
「……早く、塔から出られると良いですね」
目が合うと、そう言ってにこりと微笑む。



