昼過ぎにホテルを出て、久しぶりの我が家に帰った。
篤志さんとの食事用の服を引っ張り出し、着替えて車に戻ると、後部座席にいた悠がにっと笑った。
「そういうの着てると、ほんとお姫様だよね。初対面の夜を思い出す」
あのときのドレスに比べれば、今着ているベルベットのワンピースなんか、全然普段着に近いけど。
「お姫様になんかなれなくていい」
コルセットも、ハイヒールも、私の自由を奪うだけだもの。
「そうか」
助手席に乗り込んだ私から視線を外すと、車は知らない道へと走りはじめた。
「そう言えば高浜さん、前にデパートやスーパーに行ったマルタイさんがいるって聞いたんですけど、本当ですか?」
運転をしてくれていた高浜さんに今朝の話をすると、なぜか何も飲んでいないのに急に咳き込み始めた。
「げほ。あ、ああ……そんな人もいましたね、うん」
「美容室も合コンも行ってた」
「行った……かな。はは」



