「しょうがないって。非常事態だし」
悠はぽんぽんと私の肩をたたき、洗面所から出ていった。
あんたはいいよね。化粧なんてしなくても、綺麗なんだもん。
気を取り直し、顔を洗う。
基礎化粧品を塗って戻ると、悠がこちらを向いて言った。
「ねえ、夜出かける前に寄りたいところがあるんだけど、いい?」
「寄りたいところ? そりゃあ、許可が出るんなら別にいいけど」
最初の頃に悠が家に持ってきてくれた食品もホテルに運べそうなものは運んだけど、それもほとんど消費してしまった。
悠が小さなキッチンで作ってくれる料理はどれも、手の込んだものじゃなかったけど、体に優しい感じがして美味しかった。
「もしかして、スーパーとか?」
そう尋ねると、悠は笑った。
「まさか。前に警護中にスーパーやらデパートに行ったマルタイがいたけどさ、見事に襲撃されてたからね。そんな人が集まるところに霧子を連れてはいけないよ」



