「いいえ、それが誰かに狙われるような高価な品だという鑑定は出ませんでした」
やっぱり……素人が見たって、古ぼけた安い宝石だもん。もしかして、宝石でもないガラス玉なのかも。
「それでも、あなたにとってはとても価値のあるものでしょう。知っていますよね、この宝石の真の価値を」
「ん? えっと、どういうことですか?」
さっき、自分で高価な品じゃないって言ったばかりじゃない。
この宝石に、いったいどれくらいの価値があるの?
「母君に何も聞いていませんか」
篠田さんの表情はあまり変化がなく、何を思っているのか全然読めない。
「父が母にプレゼントしたものだとしか……」
「そうですか。では、詳しい話は父君に聞かれた方が良いでしょう」
まるでそれ以上は何も話す気はないと言うように、篠田さんはぶっつりと会話をぶった切ってしまった。
なによう、気になるじゃない!
「犯人がこれの価値を誤解しているという可能性は?」
悠が一歩踏み出す。



