必死で逃れようとすると、悠の視線が私の鎖骨辺りでぴたりと止まった。
「ああ、これか」
「え?」
「敵が、霧子の胸元ばかりちらちらと見ていたんだ。いったい何だろうと思って」
……うそ。私、そんなに見られていた自覚がないんだけど。
と言っても、たしかに怖くて敵の目なんて見られなかった。悠は敵の視線が私の胸に集中しているのに気づいていたんだ。
「このネックレス、高価なもの?」
開けられた胸元にあるのは、いつもつけている古ぼけたネックレスだった。
「ううん。母の形見なの。どこで手に入れたのか知らないけど……見た感じ、高くなさそうでしょ?」
「いや……宝石ってわかんないけど。もしかして、総理が贈ったものだったら……」
悠にそう言われ、ハッとする。
父が母に贈ったものだとすれば、私が知らないだけでとても高価なものかもしれない。



