「くそ……っ」
敵のひとりが、ナイフを持って飛び込んできた。
悠は上半身を軽くそらせ、それを回避する。
そして、敵の手首を打ち、ナイフを落とさせた。
「遅いんだよ」
ナイフを失い、よろけた敵の首筋に、容赦なく肘鉄がお見舞いされる。
呻きながら倒れた敵を、悠は靴で踏みつけた。ごぼっと嫌な音がし、地面が血液で濡れる。
「やっ……」
怖い。こんな悠、悠じゃない。
思わず数歩あとずさると、残りの敵がこちらを見た。
二人は悠には敵わないと思ったのか、直接私を狙う。
彼らの手が、私に触れようとした、そのとき。
「こらこら」
のんびりと遅い、けれど奈落の底から響くような低い声。
それが聞こえるか聞こえないかくらいで、二人の動きは止まった。
彼らは並んで肩を組むような格好で、真ん中に立った悠に、首に腕を回されていた。



