転校初日、私は群がる猿との会話より、あの子に夢中だった。

 真っ白な髪。真っ白な肌。大きくて綺麗で澄み切った紫の目。長いまつ毛。細くしなやかな体。ぷるんとした唇。
 常に教室の隅にいて、音も存在感もなく、漂うように過ごすあの子。
 風が吹けば気持ちよさそうに目を細め、細い指で髪をといていた。その時少しだけ笑ったあの子はとても神秘的だった。
 移動教室では静かに立ち上がって、誰かを誘ったりせず、1人で歩いていった。
 腰上まである髪は、少し内側に巻いてあり、歩く時になびいていた。毛先が日にあたってさらに明るく光って見える。でも、あの子はずっと日陰を歩いていて、なかなか光る髪を見ることが出来なかった。
 
 あの子の神秘的な姿を、ずっと見つめたい。あの子に近づきたい。
 あの子を────手に入れたい。

「ちょぉ〜と!?琴莉ぃ〜?聞いてる〜?」
 ハッと現実に帰ってくる。
「え、なに?彩菜?」
神秘的な世界から、派手なメイクのユルフワに、引き戻されてイラッとする。
 私はどうやら派手な方のグループに入れたようだ。
 気付かないうちに呼び捨てにされてるし、そんな文句を心の中に閉まう。
 あぁ、シロセマリ、この名前だけ覚えておけば十分だ。