「…だ、…?」

「……ろ」


微かに廊下から聞こえてくる話し声。


嵐くんとみのりんかなぁ。


ガララッ、シャッ!


「やっほ、璃乃!大丈夫かいー?」


やっぱりみのりんだ。


カーテンから覗く、みのりんの満面の笑み。


「もーなんかさー、兄貴が自販機の前でシケた面してるから、思わず吹いちゃったよー!」


けらけら、と心地よい笑い声が保健室に響く。


しーっ、と人差し指を唇に当ててみせるとみのちんは罰の悪そうな顔をする。


そのうしろから、のそり、と現れる嵐くん。


「実里のあほ、うるせぇな」


嵐くんもう怒ってない?
ちらっと嵐くんを盗み見る。


「あ、嵐くん、ごめんね、その、黙ってて」


「俺も変な態度して悪かったな」


「ううん……」


私が首を横に振ると、嵐くんは頭を撫でてくれた。


「えへ……」


微笑みを返す、と。


「ちょーっと、璃乃!兄貴!あたしを差し置いてイチャイチャすんなーっ」


「うるせぇ邪魔すんなよ、おい」


「兄貴のばか!」


もう、二人とも静かに、なんて宥めてもたぶん意味ないなぁ。