松川さんは私より20歳も年上
左手の薬指にはシルバーねリングがはめられていた


社内でも有名な愛妻家だ
奥さんとは社内恋愛だったらしく
それはそれは大恋愛だったらしい


私が入社した頃には
退社して、だいぶ経っていた


そんな話を聞いていたから
会うたびに話しかけてくれる松川さんは
私にとって頼りになる上司だった


プライベートで会ったことがない
会うこともないと思っていた

当時、私には彼氏がいた
浮気とかも絶対ないと思っていた


そんなある日、忘年会で居酒屋にいた私
総務部だけでの忘年会だから五人程度

けど、開発部も忘年会で同じ居酒屋にいた
本当に偶然だった


総務は二次会はしない
お好きにどうぞ、ってスタイルだ


店先で、総務の人達と別れた私は
駅へと足を向けた



「神坂さん」



そう呼ばれ、振り向くと松川さんだった



『松川さん、開発の皆さんは?』


「みんな二次会、俺は苦手だから……化粧や香水くさいネエちゃんいる所」



あー、キャバクラか、
確かに、あんな臭いつけて帰ったら
奥さんと喧嘩しそうだ