ジトジトした梅雨も明けた頃、無事に前期試験も終わった。
学食でクラスのやつらと飯を食っていると

「イツキ、あんた今日ヒマかい?」

中野さんが背後から突然話しかけてきた。

最近は『武田』ではなく『イツキ』って呼び方にかわっていた。

「なんすか、中野さん?」

「買い物に付き合いたまえ」

彼女は偉そうなポーズを取りながらボクに言った。

「へっ?何故に?お断りいたします」

ボクは面倒くさかったので即座に拒否した。

「スベコベぬかさずくるのら!!」

ボクの言葉など無かったかのように中野さんは言った。

「だから、なんなんスか?つか、何語っスか、それ?」

「今日ね里沙と買い物行くんだよ、んで、あんたは荷物係!!どうせアンタ、ヒマでしょ?イツキく~ん」

あっ、里沙さんが来るなら、ね。

「ホント強引だな中野さんは。しょうがないなぁ、イイッスヨ、で何時にどこ?」

我ながら情けなくなるほど『里沙』って言葉に弱い。
駅前に4時にと言って中野さんは去って行った。
クラスのヤツらはポカンとしていた。

「武田ぁ、あのキレイなお姉様はどなただ?」

「ん?あぁ、サークルの女王様だよ」

ボクは食べかけのカレーを口にかき込みながら答えた。

「なぁ、すんげぇ美人じゃねぇか!」

ん?中野さんてそう見えるのか?
それとも、コイツ等の趣味の問題か?

まぁ、確かに言われれば、眠そうなトロンとした大きなタレ目に、少し赤いストレートの髪、5つもピアスのついた耳、挑発的な少し尖った真っ赤な唇、スッと通った鼻筋、小さな顔、そのくせ出るとこは出ている体型とくりゃ、確かに、グッとくるやつの何人かはいるわな。
でも、それはあくまでも個人の好みの問題だからな。