「…時に赤野。あ、明後日の退社後は…予定が入っているか?」

 さりげなく言ったつもりが、不覚にも、声がうわずってしまった。

「明後日…クリスマス・イブですよね。勿論、ガラ空きですが?」

 しかし彼女は、自信たっぷりに答える。

 …哀れな奴だ。

「そうか、やっぱりな。…じゃあ、空けとけ。社会人の何たるかを、たっぷりと教示してやる、覚悟しとけよ」

「は、はいぃっ。分っかりましたぁ!」

 赤野は何故か警察官の敬礼のポーズをまね、俺のスーツを握りしめると、戦々恐々と部屋を出ていった。


 …そう、たっぷりと教えてやろう。

 ベッドの上でな。