柿崎さんはキラキラした瞳で、ブラシを手にした。


「ののね、こういうことやるの好きなんだぁ。紗帆ちゃんの髪、サラサラだから触り心地良さそうって前から思ってたの」

「あ、ありがとう……」


お世辞だったとしても嬉しい。

それに、誰かにヘアアレンジしてもらうことなんて今までなかったから、楽しみ。


私は手鏡を持って、後ろから柿崎さんが髪の毛を結んでいく。


「でーきたっ」


早技。
ものの五分で出来あがってしまった。

前髪をトップ部分に巻き込みながらねじった髪の毛は、耳の上でピンで留まっている。

残りの髪の毛はヘアワックスでゆるくくせが付けられてある。

額があらわになっている自分の顔は、他人のものみたい。