吐息が触れそうなほどの距離。

……空耳かと思った。


「それ――」


――ゴーン、ゴーン、ゴーン……。


午前0時を指す鐘の音が鳴り響き、私は言いかけた言葉を失った。

私、今……何を……。


「ん?ごめん、聞こえなかった」

「あ……、えーと……、好きな人……いるの?」


違う。

私が言いたかったことは、これじゃなくて。


「うん、いる。安心したでしょ」

「……」