「柿崎さんが思ってるようなこと、何もないよ」

「えー、嘘だぁ。何も?してないの?好きな人と一緒で?」

「うん、何も……――」


記憶がフラッシュバックして、至近距離にあった顔がよみがえった。

キスは、何かしたうちに……入る?


「やーだぁ、紗帆ちゃん顔真っ赤だしっ。想像するのも恥ずかしいーっ!」

「しっ、しなくていいです……!」


柿崎さんが両頬に手を当てて、楽しそうに笑う。


「ののも早くタケくんに会いたくなっちゃったぁ。紗帆ちゃん、ありがと」

「?」


なんで「ありがとう」だろう。


「だーいすきっ」

「!わ、私も……!」

「えへへっ、また後でねっ」


手を振り、今度こそ柿崎さんは部屋を出ていった。