「柿崎さん、朝だよ。食堂行かない?」

「ん……」


柿崎さんは薄く目を開け、私の姿を確認して、すぐに起き上がった。


「さ、紗帆ちゃんっ!あの……」

「……おは……よう」

「お、おはようぅー!」


泣きすぎたまぶたはすでに腫れぼったいのに、柿崎さんはさらに涙をポロポロと零しはじめた。


「あ、な、泣かないで……」

それ以外に思いつかないとは、どれだけ語彙不足なのか。


「ごめんねごめんね、紗帆ちゃん笑ってたから嬉しくて……」


よかった。
無理して作った笑顔でも、使いものになった。


「あのね、ののね、本当にレイジくんのこと紗帆ちゃんから取ろうとかそんなこと思ってるんじゃなくてね、」

「うん……、もう謝ったりしないで……。私は全然何ともないから……」


寝起きで、開口一番にそれが出てしまうくらいに気にしていたのかな。

でも、もう聞くのは辛い……。


柿崎さんは正直に話してくれたのに。

「何ともない」なんて、嘘。

考えれば考えるほどに、頭が痛くなった。