琉偉に言われた通り、自宅に戻った雪。

相馬との内容は言えないまま、ただ会う場所と時間だけを琉偉に教えたのだが。

話が終わったら連絡すると言われていた為、雪はただそれを待つしかない。

もどかしくて、何をしていても、気になって、部屋の中をウロウロしたり、携帯を見たり。


そんな中、ようやく携帯が鳴る。

もちろん相手は琉偉だ。雪は慌てて携帯を落としそうになりながら、何とかそれに出た。

「…もしもし」

冷静な口調で言う。

『…白井さん、全部終わったよ』

雪の耳元に、琉偉の優しい声が響く。

その言葉に涙が浮かんだ。

『…白井さん、もう、何も心配しなくていい。これからは何もかも順調にいくよ』

「…」

『…白井さん、大丈夫?』

「…はい、社長、本当にありがとうございました。何度お礼を言っても足りません」

そう言った時だった。

インターホンの音。

雪は、携帯を耳に当てたまま、除き穴を見てみるも、誰もいない。

ドアを不思議に思いながら、開けた雪。

「…どうして」

雪のその声が聞こえた琉偉は、雪の名を呼んだ。

が、携帯のノイズ音の後、携帯が切れた。

何度も、雪の名を呼んだが、1度もそれに雪が答えることはなかった。