その後はそれぞれ、専務、常務、社長室へと別れて向かう。雪は課長と共に、社長室に向かった。

ノックをすると、琉偉の声が聞こえ、雪は思わずビクッとなり、課長が不思議そうに声をかけた。

「…白井さん、どうかした?」
「え?あ、いえ、なんでもありません」

課長の言葉に、雪は笑顔で首を振った。

「そう?それじゃあ、開けるよ」
「はい…」

ドアを開けると、ブラックスーツに身を包んだ琉偉が、デスクに座り、この後にある新年の重役会議の資料に目を通していた。

「おはようございます。今年も一年、白井共々よろしくお願いします」

そう言って頭を下げる課長に続き、雪も頭を下げた。

「こちらこそよろしく」

それだけ言うとまた、資料に視線を落とした。課長は今後の予定を順に読み上げていく。雪は一度社長室を出て、給湯室に向かいコーヒーを淹れると、再び社長室に戻る。

「コーヒーをお持ちしました」
「ありがとう、そこに置いておいて」

琉偉の言葉に従い、定位置にコーヒーを置くと雪は頭を下げ、部屋を出て行く。

「白井さん」

声をかけられ、振り返った雪。

「…いや、なんでもない。下がっていい」
何か言いたそうな顔をしていた琉偉だったが、そう言うので、雪はへやをあとにした。