ドアを二回ノックすると、やはり、中から琉偉の声が聞こえた。

「失礼します。黒澤社長、今年の業務は全て終了しました。こちらでお手伝いすることはありますか?」

「いや、こっちも今全部終わったところだ。こんな日まで仕事をさせて悪かったな」

「いいえ、出張もありましたし、今日までに全ての業務が終了出来て良かったです。何もないようでしたら、私はこれで失礼します」

「…白井さん」

頭を下げようとした雪に、琉偉が名前を呼んだ。

「…何か?」
「…これから、実家に帰省するの?」

「いいえ、毎年、年末年始は帰省しません。実家が遠いのでなかなか帰れなくて」

「そう…なぁ白井さん、もし良かったらなんだけど、一緒に初詣いかないか?」

「初詣…ですか?」

突然の提案に、雪は目を丸くした。

「…イヤなら、止めとく」
「い、イヤなんて、そんな!えっと…一緒に初詣行く人いないんですか?」

「…残念ながら」

そう言って肩をすくめる琉偉を見て、雪は少し笑って。

「…同じです。…私でよければ、行きましょう、初詣」

雪の答えを聞いて、琉偉は嬉しそうに微笑んだ。