恋愛図書館

後で知った話。
唇は、特に敏感に刺激を感じ取るらしい。


それだけじゃなく。
こういった奇跡は、ごく稀に起きてるようで…

原因は解明されてないけど。
生命維持装置を外した事が、何らかの刺激になったと考えられてるらしい。



だけど俺は。

頑張ったキミと、信じた俺の…
愛の力なんじゃないか、なんて思ってる。






「うん…
短いのに、なんかいいね。

私もこの本も好きだし、メッセージとも何気に合ってるね」


その本は…

時間を盗まれた所為で、余裕や楽しむ事を失ってしまった人々に、その時間を取り戻してくれた不思議な少女の話。


俺達の状況とは似ても似つかない設定だけど、どこかリンクしてて。

そして俺達も、心の余裕や掛けがえのない時間を失ってたからこそ…
その内容により深く感銘を受けたし。

取り戻した愛しい時間を想って、あの頃感謝で埋め尽くされてた。




「このメッセージ、あの笑顔が素敵なクレープのお姉さんが書いたの?」


「そう!
イケメンシェフの奥さんで、ここのパティシエールなのっ。

すごいんだよぉ?
ここのケーキ、昼過ぎにはほとんど売り切れちゃうんだって!」