今まで聞いたことのないくらい、
甘い声で誘われる。
そんなこと言われたらもう、
言うしかなくなってしまう。
「……好きです。」
ぐっと拳を握り、
意を決して言った。
その瞬間、目の前が光って、
音が鳴った。
それがシャッター音だと気づくのに、
5秒もかからなかった。
「ちょ、ちょっと!
なに人の一世一代の告白、撮ってるんですか!」
「いや、可愛かったから、つい。」
「そ、そう言ったら許されると、
思ってるんでしょ!
騙されませんからね!」
その瞬間に何かが弾けたように周囲が笑い声に包まれた。
……撮影中にこんなことになるなんて、
申し訳なくて皆の顔が見れないけど、
緊張してガチガチだった写真より、
まださっきの方が良い写真が撮れたならなにより。
……本当に良い写真を撮るためにだけに相田さんがあんなこと言ったんだったらどうしよう。
「また、変なこと考えてるでしょ。
言っとくけど、俺たぶん、
瀬戸さんが想像してるのより、
ずっと瀬戸さんのこと好きだから。
だから、言ったんだよ。
……まぁ、あんなガチガチに固まったままじゃ撮影出来なかったから言ったのもあるけど。」
「……絶対後者が目的でしょ。
私のちょっとしたときめきを返してください。」
そう言った私を見て、
相田さんは楽しそうに笑いながら、
またシャッターを切った。
End.


