レンズ越しの鼓動



「……相田さんが美しいものしか撮らないように、私も本当は、こうやって人前に立つのは逃げだしたいくらい苦手なんです。」


「ん?あ、はい。」


私の突然の言葉に、
戸惑いながらも聞いてくれる相田さん。

さっきまでの和やかだった空気とはうってかわって、私達の間に流れる異様な空気に気づいたのか、
スタッフさんも息をのんで見ている。




……たくさんの人に、見られてる。
それだけで緊張して、足が震えてくるくらいだけど。


私は意を決して、また口を開いた。




「相田さんと向き合って立つのは、
何故か好きなんです。
なんか、落ち着くって言うか、
相田さんに見られるのも、
相田さんに撮られるのも、
上がり症だから、すごく緊張するんですけど、不思議と嫌じゃないんです。」



「……うん。」


一言一言選ぶようにゆっくりと話す私に合わせて、相田さんもゆっくり頷く。


「……えっと、それでですね、
結局なにが言いたいかって言うと……」


「……言うと?」


「……あー、と、
やっぱり、なんでもないです!」



肝心の所でまた踏みとどまってしまう。



……本当に情けない。バカみたい。


唇を噛み締めて、
なにも言わなくなった私に、
相田さんはしびれを切らしたように言った。



「……早く、早く、
俺が好きだって言えよ。」